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教育現場におけるメディアアート    

 

2000 年代以降コンピューター教育が普及していく中で、大学、大学院において メディアアート教育も行われるようになっていった。1968 年「九州芸術工科大学」が設立し学際的要素を備えた新しいタイプの人 材を育成する事を目指す。その後 1975 年に筑波大学芸術専門学群が設置、翌年 には大学院芸術学研究科の博士課程が開設される。1990 年 4 月、湘南藤沢に慶 應義塾大学の新キャンパスが開設され総合制作学部、環境情報学部が設置され 学際的なカリキュラムが組まれる。1990 年、日本初のメディアアート専門学校、 岐阜県立情報科学芸術アカデミー(IAMAS)が開校し翌年は大学院も設置された。 1998 年に多摩美術大学では情報デザイン学科が誕生、続いて 1999 年に武蔵野美 術大学造形学部にデザイン情報学科、東京藝術大学美術学部に先端芸術表現学 科が開設された。2000 年に東京大学大学院情報学環、学際情報学府が設立され る。以上のように大学、大学院においては特に 1990 年に設立された IAMAS を皮切り にメディアアート教育が取り入れられるようになったのが分かる。小中学校、 に置いてはどのようなメディアアート教育が行われているのだろうか。

 平成 21 年度に小中学校、平成 22 年度より高等学校の新学習指導要領におい て、情報教育の充実に関する内容を改正小学校では平成 20 年に学習指導要領が 改訂されている。小学校学習指導要領では総則の中で「各教科等の指導に当た っては、児童がコンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ 親しみ、適切に活用する学習活動を充実するとともに、視聴覚教材や教育機器 等の教材・教具の適切な活用を図ること。」とあり図画工作科における活用例は 具体的には示されていない。中学校学習指導要領(平成 24 年)においては第六節で以下の文言が記載されて いる。

 

イ  美術の表現の可能性を広げるために,写真・ビデオ・コンピュータ等の映像メディアの積極的な

     活用を図るようにすること。

ウ  日本及び諸外国の作品の独特な表現形式,漫画やイラストレーション,図

    などの多様な表現方法を活用できるようにすること。

 

中学校から積極的な写真・ビデオ・コンピュータ等の映像などのメディアメデ ィアアート教育に関する具体的な内容が示されている事がわかる。文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成25 年度)においては「授業中に ICT を活用して指導する能力」は小学校において は 72%中学においては 65.2%、高校においては 68.6%という結果であった。しか し図工や美術の授業でどれほど活用されているかという統計はなく、その実態 は分からない。次に、花篤實が監修する「美術教育の課題と展望」(2000 年発行)を参考に 検証していきたい。美術教育にみるコンピューター利用の現状についてグラフ ィックソフトを用いたコンピューター教育について以下のように指摘している。

 「グラフィックソフトを用いてモニタ画面に絵を描く作業は、ツール選択とマ ウス操作の結果が即時的にモニタ出力に反映されるので、コンピューター操作 の直感的イメージを把握しやすい活動となる。よって、絵を描くこと好む好ま ないに関わらず、この作業は楽しさをともなう。指摘するまでもなく、この種 の活動は、コンピューター教育の導入に造形活動を利用したものに過ぎず、本 来は美術教育とは明確に区別されるべきである。だが現実には、指導者が美術 教育と位置づけた授業が、結果的にコンピューター教育の導入に留まるケース も少なくない。この場合、子どもたちが活動に集中しても、彼らは造形表現を 深めているのではなく、コンピューター操作の理解を深めているのに過ぎない のである。」(上山浩)

 

上山氏が指摘するように、単にコンピューターを図工の授業に組み入れるだけ では造形的な表現活動とは言いがたい。また学習指導要領においても小学校図 画工作において写真・ビデオ・コンピュータ等の映像メディアの具体的な授業 案等が明記されていないことからも分かるように、メディアアート教育が特に 小学校の図画工作では確立されておらず、また指導できる教員も少ないという 事が読み取れる。

 

 

 

 

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