川崎市民ミュージアムの学芸員、濱崎好治氏にインタビューを行った。川崎 市民ミュージアムは写真、漫画、映画など複製技術による芸術と川崎の歴史民 俗資料などを所蔵し、ミュージアムショップ、図書閲覧室などの施設もある、 総合的な文化施設である。複製芸術の収集を日本で最初に行った美術館として、 川崎市民ミュージアムをモデルケースに美術館におけるメディアアートの関わ りを見ていきたい。濱崎氏は 1988 年開館当時から映像分野を担当されており、 メディアアート教育や映像作品の収集展示をされてきている。インタビューを 行う前に川崎市民ミュージアムにおける開館から現在までの年表を作成し、そ の年表を元にインタビューを行った。(別紙資料参照)
川崎市民ミュージアムでは複製技術によって生みだされた印刷・漫画・ポス ター・写真・映画・テレビといった視聴覚的な記録と表現が拡張してきたこと を見据えて、19 世紀末から現代まで、メディアについての理解を高めるために、 資料と作品を収集し、調査、研究していくというのを基本に開館した。また、 収集、保存、展示だけでなく美術館において作家の作品制作の支援、メディア アートのワークショップを行ってきた。川崎市市民ミュージアムは、制作のた めのスタジオ、フィルムの機材、編集室などの設備が整っている。メディアア ートはその特性から技術の変遷により、保存、再生する機材も変わってしまう。 そこで美術館はそのような機材設備を整え保存、再生できる装置としての環境 を提供する場として成り立っている。
川崎市民ミュージアムでは 1988 年の 12 月に最初のメディアアート教育普及活 動ヴィデオアート講座を開講している。作家だけでなく「市民も参加した作品 を」という美術館の呼びかけで、しりとり形式のアニメ「アニメあ・ら・かる と」を川崎市内の小中高校生四人と久黒洋二さんらプロ作家と制作した。(資料 記事参照)参加者は一人当たり 20 秒間を担当しアニメーションを作った。 アニメーション作家 22 人と小中高校生によって映像をしりとりのように受け継 いで一つの作品を完成させ、子どもたちは実際にアニメーションをつくる行程 や技術をプロから学ぶ機会となった。
川崎市民ミュージアム
におけるメディアアート
