まとめ
ここまで学校現場、美術館、文化庁メディア芸術祭におけるメディアアートと の関係、またそこから学校現場での「メディアアート教育」の導入方法を提案 してきた。この章では「メディアアート教育」を学校現場に取り入れていくこ とでどのようなことが予想できるか、今後の展望を述べてこの論文を締めくく りたいと思う。2000年前後からインターネットが盛んになり、情報化社会と呼 ばれるようになった現在、画像による情報が社会に溢れているように思う。 youtubeなど誰もが簡単に映像を閲覧することができ、またスマートフォンをつ かって誰もが簡単に画像を投稿し、全世界と共有できる。若者の間で流行して いるアプリケーション「instagram」は「ハッシュタグ」という記号#をキーワ ードの最初につけることで、そのキーワードに引っ掛かった全世界の人が投稿 した写真を縦断的に観ることができる。例えば「#カワイイ」と検索キーワー ドに入力すれば、全世界の「カワイイ」写真が閲覧できるのだ。このようにこ れからも画像による情報は増え続けていくことが考えられ、そうした中では、 単に受動的に画像情報を取得していくだけでなく、能動的にメディアを読みと いていく力が今後必要になってくるのではないだろうか。そこで、小学校の図 画工作の中で「映像が動いてみえる仕組み」を実践的な作業を通して学ぶこと で、メディアを読み解いていく力の基礎を担うことができるだろう。子どもた ちは普段の生活の中でもテレビやゲームを通してメディアに触れて育っている が、それは単に「娯楽」であり受動的になんの疑いもなく得ている。メディア アートはテクノロジーとともに更に進歩していくことが予想され、いずれバー チャル世界が私たちの現実世界に介入し、どこまでがバーチャルでどこからが リアルなのか曖昧になっていく、あるいはバーチャルが現実世界を覆い隠して いくかもしれない。細野守監督のアニメ「サマーウォーズ」では仮想現実の中 で人々が生活をし、何者かによってその世界が乗っ取られてしまうというスト ーリーであったが、同じように仮想現実がいつしか「現実」となってしまう日 がくるかもしれない。そうした中で、ある意味冷静にメディアと向き合うこと のできる力がこれからの情報化社会に必要となってくるのではないだろうか。