メディアアートの歴史
まず「メディアアート」という言葉についてこの論文の中でも定義を行う必 要があるだろう。1997 年から実施されている「文化庁メディア芸術祭」におい ては「メディアアート、ゲーム、アニメーション、漫画などの現代の日本文化 を表現するメディア芸術」とある。この説明から日本語における「メディアア ート」とは「コンピューターとその他の電子機器を利用した芸術」という概念 であることがわかる。メディアアートの特徴としては観客の参加を可能にする インタラクティブ性、複製芸術、時間軸を持ち新しい知覚的要素を提示し(身 体の拡張)表現の可能性を広げるアートであると言える。その歴史は 1946 年に デジタルコンピュータ「ENIAC」の完成からコンピューターアートがはじまる。 また、同じ頃テレビの放送システムが確立しテレビが人々の生活様式を変えて いく中で、ナムジュンパイクが展示空間にテレビを持ち込み、テレビ番組を展 示することで映像の実験的な試みが行われていくようになる。1956 年に世界最 初の 2 インチのヴィデオテープレコーダが発表され 1965 年に世界初の 1/2 イン チオープンリールの家庭用 VTR が発売され個人がヴィデオカメラを手軽に扱え るようになる。1967 年に SONY のポータブル・ヴィデオカメラ「Portapak」が米 国で発売されアーティストにとってヴィデオカメラがより身近な道具となり、 このころからヴィデオアートが生まれる。そして 1971 年に発売された世界初の カセット式ヴィデオである U-マチック(3/4 インチのヴィデオテープを使用) の出現により、ヴィデオアートはテレビというマスメディアから離れ、自立し ていく。
このように 1960 年代末のアート&テクノロジーの流れの中でコンピューターア ートとヴィデオアートが相前後してインタラクティブであるという性質から展 開していったのがメディアアートの歴史である。